1966年発表の著者のデビュー作。
現代のように経済小説が一つのジャンルとして認知されていない時代に、
その斬新な内容と発想が話題を呼びその後の経済小説の興隆を生んだ。
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あらすじ
戦前、興業証券に入社したが兵隊にとられて退社。
戦後、魚のブローカーとして働いていた山鹿に
興業証券創業者の大戸から誘いがかかる。
最初は渋っていた山鹿だが、結局興業証券に復帰。
一からやり直した山鹿は神武景気・岩戸景気の中、
独自の発想と勘で大成功し「兜町最後の相場師」と呼ばれるのだが――という話。
感想
株をめぐり財界から個人投資家まで様々な人々の思惑や欲望、
それに関わる証券マンの仕事ぶりまで描かれた経済小説の名作。
当時の株取引はまさに人vs人だったのねとわかる作品。
今ではインターネット取引とかですからねえ、時代の違いといってはそれまでなんだろうけど。
スポーツでも長嶋を始めスターを求めていた時代、
兜町でもスターを求めていたんですな。
モデルは日興証券の人だったっけ、確か。
時代の流れに翻弄され、最終的には左遷されていく山鹿。
冷徹に時代の趨勢を予測し、体制を変革していく創業者。
何人かの主要人物がいるが、山鹿の愛人の元彼で共産党を辞めた西沢は本人の経験も入ってんのかな。
嫁の出産費用が払えなくて事務所の金を流用し追われる地区委員長。
まあ今も昔も似たようなことはあるでしょうな。
お花畑で人間は生きとらんのよ、現実の世界で生きてるんだから。