松本清張映画「天城越え」を久々に観る

原作が発表されたのは1959年。
1978年にNHKでドラマ化、1983年に松竹で映画化、
1998年にTBSでドラマ化されている。
ヒロインの移り変わりでいえば大谷直子→田中裕子→田中美佐子。

あらすじ

静岡で印刷屋を営む小野寺(平幹二郎)。
ある日、一人の老人が彼を訪ねてきた。
田島(渡瀬恒彦)と名乗るその老人は県警の嘱託。
「天城山殺人事件」という調書の印刷を依頼しに来たのだが、
小野寺はその原稿を見て激しい衝撃を受け、14歳の頃を思い浮かべた。

小野寺は少年の時、川端康成「伊豆の踊子」のように一人で天城越えをした。
そんなことをした理由は未亡人である母親(吉行和子)が男と寝ていたのを目撃し、
亡き父を裏切った母を許せなかったからだ。
静岡の兄を訪ねようと一人旅を始めた小野寺だが、様々な人と出会うこととなる。

その中の一人がハナ(田中裕子)だ。
なぜか素足のハナと歩くうちに、小野寺の心の中に母の面影が重なった。
ところが、道の途中で土工と出会うとハナは小野寺と無理やり別れ、
その土工と歩いて行った。
気になって引き返してみると、草むらの中で抱き合う2人の姿を目撃する。

やがて土工の死体が発見され、ハナが容疑者として逮捕される。

土工からもらったと思われる金や、足跡の一致など
ハナにとって不利な証拠ばかりだが殺しは認めないハナ。
結局証拠不十分でハナは釈放。真犯人を知っているようだったが
彼女は決してそれを口にせず事件は迷宮入りとなった。

あれから30数年――。
小野寺は調書を紐解きながら昨日のことのように思い出していた。
田島は事件を担当した刑事だった。

田島は犯人は子供だったと語りだす。
だけど、どうしてもわからないのは犯人である子供の動機だとも。
小野寺にはそれがわかっていた。

なぜなら、犯人は少年だった小野寺だったからだ。

彼はハナと土工の情事を見た瞬間、取り戻した母の存在が再び奪われた感じがしたのだ。

ハナはなぜ自分をかばってくれたのか。
調書を読み進めるうちに、小野寺はその理由を感じ取っていた。
その理由とは――という話。


感想

清張版「伊豆の踊子」ということで名高い本作。
内容は全然違うのだが、文壇の大御所に対する強烈な意識の現れと各方面で分析されている。

3つの映像化はいずれも悪くないと思うのだが、なかでも映画版の田中裕子はいい。
2回目のテレビバージョン、田中美佐子版は観てないような。
1回目の松本清張がゲスト出演している大谷直子版は昔観た。

子役が鶴見辰吾だったっけ。
中村翫右衛門 と宇野重吉の演技はさすがだった。

老刑事の渡瀬恒彦と平幹二郎のものすごい長回しの場面のほか、
雨の中、押送車に乗せられようとする
ハナと野次馬の中にいる少年が見つめ合うシーンも名場面。

ハナが何か言うのだが、少年は聞き取れない。

「タコが言うのよ~」とは決して言っていない(笑)

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