ラブストーリーの名作映画「離愁」を久々に観る

1975年のフランス・イタリア合作映画。
ラストシーンのストップ・モーションが
映画史に残る名場面として名高い。

第二次世界大戦のフランスを舞台に妻子ある中年男と、
ドイツ生まれのユダヤ人女性との純愛と
その宿命的な悲しい最後を切々と綴った戦争映画。

主演はジャン・ルイ・トランティニアン、ロミー・シュナイダー。

あらすじ

1940年4月――。

第二次世界大戦が始まって半年余り、
ドイツ軍はノルウェー、デンマークに侵入、
オランダとベルギーを手中に収め5月にはフランスに侵攻を始めた。

ジュリアン(ジャン・ルイ)は北部フランスの
ある村でラジオの修理工をしていたが
事態の切迫で住み慣れた土地を離れなければならなかった。

村人たちが汽車で村を立ち退く日、
ジュリアンは妊娠した妻と幼い子を抱え参加した。

しかし、女子供は客車、男は家畜車に乗り込んだため
ジュリアンは家族と離れ離れになってしまった。

戦時中だというのに外には美しいフランスの田園風景。
次の駅に着くと待ち構えていた避難民が殺到、
列車はすし詰め状態、いつやってくるかわからない
ドイツ軍の侵攻に避難民の不安は高まるばかり。

やがて名も知れぬ駅に列車が停車した時、
ジュリアンは小走りに駆けてきた女、
アンナ(ロミー)を見つけ、気の毒に思い
自分が乗っている家畜車に乗せてやった。

二人は自由に身動きできない貨車の中で
互いに寄り添うように旅を続けたが、ほとんど口はきかなかった。

しかし、二人の心は次第に高まり求めあっていた。

ついにドイツ軍は列車に追い付き、
爆撃を受け多数の死傷者が出た。
避難民たちはそれぞれ一時近くの野や林に避難する。

6月にパリが陥落し、機関士達は危険だからと運転を続けることを拒否。
しかし、避難民たちは強引に自力で列車を動かし、ようやく海のある街に辿り着く。

村を出たことのなかったジュリアンは、初めて見る海の景色に感激する。

アンナにとっても思いは同じで二人はつかの間の幸せを過ごす。

だが、ジュリアンが出産を控えた妻を見舞っている間に
アンナは何も言わずどこかに姿を消してしまう。

時は流れ1943年の冬のある日。

家族と細々と暮らしていたジュリアンは
ナチの秘密警察から呼び出しを受ける。

出頭するとそこにはアンナがいた。

アンナはレジスタンスの一員として捕まっていたのだ。

ジュリアンは係官にアンナを知っているか、
もし知っているならどんな関係か尋問される。

知らぬとシラを切れば自分の身の安全は守られる。

だが、ジュリアンにはそれができなかった。
一度は部屋を出ていきかけるが、立ちもどり
彼女に近づきアンナの顔に手を差しのべる。

「やっぱり知っていたんだね、これでわかった。
君もレジスタンスの一員だったんだ」

署長の冷厳な声が響く中、ジュリアンは涙があふれる
アンナの顔を両手にしっかりと押し包んだ――。


感想

久々に観たがラスト・シーンの余韻は変わらない。

気弱な主人公が最後に見せる
今風にいえば「男気」ということになるのだろうが
そんな軽い言葉では済まされない。

なんたって命がかかっている。
自分だけではなく家族の分もだ。
それでも愛に殉じる道を男は選んだ。

署長が誤解してレジスタンスの一員だと
断定するのに一言の言い訳もせず
アンナだけを見つめ優しく微笑んでいる。

二人は一言も発しない。

そしてアンナが泣き崩れるところでストップモーション。

これより優れたストップモーションの使い方なんて
ないんじゃないかと思わせる見事さ。

こんな話書きたいなあ。

ちなみにジョルジュ・シムノンの原作はこんないい話ではない。
男は彼女を密告し売り渡す卑劣な主人公だからだ。

真逆じゃねーか。

しかし、その原作を思い切り改変し
鮮烈な愛のドラマにした監督と脚本家は偉い!

ていうかよく文句出なかったな。

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