1957年10月公開の東映映画。
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ベルリン国際映画祭監督賞、キネ旬第2位の作品。
広島に投下された原爆による放射能のため
10年経って死んだ名もなき少女の姿を通じて現実の非情さにメスを入れた作品。
監督は今井正。
戦時中の転向を恥じ戦後はレッドパージに屈せず
独立プロで数多くの名作を作り上げたお方。
脚本はこの時代を代表する名手、水木洋子。
直接的ではなく少年少女の純愛を抒情的に描き
放射能の恐怖を浮かび上がらせるところが秀逸。
あらすじ
昭和30年。
上野にいる浮浪児の群れの中で、ミツ子(中原ひとみ)が
スリ仲間から足を洗おうとしてリンチされかけたところを不良仲間の貫太郎(江原真二郎)が助ける。
2人は更生を誓いあうが世間の風は冷たい。
仕方なくまたスリをするが捕まり2人は離ればなれに。
貫太郎は親切な監察官(岡田秀次)のおかげで更生の道に。
一方、ミツ子は反抗し続けるがある日、血が止まらなくなる。
診断の結果、原爆症ではないかとの疑いが。
原爆投下後の3日後、ミツ子は祖母の背におぶさり広島を訪れていたのだ。
町工場に勤め始めた貫太郎は、そばやの出前持ちをする
ミツ子を探し出しきちんと病院に行くように勧める。
診断の結果はやはり原爆症だった。
落ち込むミツ子を貫太郎はピクニックへと誘う。
楽しく一日を過ごした二人が交わすぎごちない口づけ。
貫太郎はミツ子の医療費を稼ごうと必死で働こうとするがミツ子は衰弱する一方だった。
結局、ミツ子の死を食い止められなかった貫太郎は
茫然として夕暮れの雑踏の中に姿を消していった――という話。
感想
今井監督の言葉によれば当初別の脚本家が書いた内容は
学徒出陣で出征し復員した医師のもとへ診てもらいにきた原爆症の娘が愛し合うというものだったらしい。
それを上野に野宿している不良少年と少女の話に水木洋子が書き直したとのことだ。さすがである。
テーマというのはむき出しにしてやれば
いいというものではないというのがよくわかり改めて勉強になった。