1956年公開の独立プロ映画。
実在の係争中だった事件を映画化し強烈なインパクトを残した。
原作は正木ひろし弁護士の「裁判官」、脚本は橋本忍。
まだ審理中の事件を映画化するとは何事か、と
裁判所から圧力をかけながらも屈せず作り上げた。
キネマ旬報ベストテン第1位。
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あらすじ
瀬戸内のある村で老夫婦が殺害された。
事件を担当した検事は複数犯と断定し、最初に捕まえた小島を拷問。
彼はチンピラ仲間4人のうち植村を主犯と証言、他の3人も逮捕された。
迷惑なのは植村たち4人で、何が何だかわからない。
それぞれアリバイを主張するが、聞き入れられず拷問され調書に印を押してしまう。
一審で植村に死刑判決がおりる。
弁護士たちの懸命な活動により、二審では無罪かと思われた。
ところがやはり植村に死刑判決が。
一度黒と決まったものは変わらないのか。
植村は面会に来た母親の後ろ姿に「まだ最高裁がある!」と叫ぶ――という話。
感想
数々の冤罪事件を手掛けた正木ひろし弁護士を知る人は
今日どれくらいいるのだろうか。
最初に存在を知ったのは高校時代に観た「知ってるつもり?」。
大学時代、冤罪事件に興味があったせいもあって
正木ひろし弁護士の本はよく読んだなあ。
事件を丹念に調べ上げ、無罪と確信し
「もし有罪だったら二度と映画は作らない」として
取り組んだ今井正、橋本忍の映画人としての良心が光る。
犯行時間の矛盾を指摘した早送りになるシーンは
何回観ても不謹慎ながら笑ってしまう。
小学生でもわかるようなことがなぜ17年もかかるのか。
映画を観た別の事件の犯人が「自分が真犯人だ」と
名乗り出るなど社会に大きな影響を与えた作品。
世の中で起きていることで自分の身に降りかからないものはない。
自分も冤罪に巻き込まれる可能性はあるのだ。
「人の命は権力で奪えるものなのか」
テーマも映像を古びることのない不朽の名作。
正木ひろし弁護士なんかドラマになってもおかしくないと思うんだけど。