2012年出版の短編集。
表題作のほか、「18時24分東京発の女」「日曜日には走らない」
「首相暗殺計画」「寝台特急六分間の殺意」の5編が収録されている。
映像化はいずれもまだなし。
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表題作「特急ゆうづる3号の証言」は、鉄道を利用したアリバイの話。
女をひっかけて睡眠薬を飲ませ襲った男が、特急「ゆうづる」が
通過していくところを女に目撃させるのがアリバイとなる。
このアリバイを十津川警部がどう解くかがポイント。
初出は「小説宝石」1989年2月号。
「18時24分東京発の女」も目撃がポイントとなる。
犯人はしょうもない奴だが、協力者の存在がラストに効いてくる。
ラストはかなりやるせないというか切ない。
初出は「オール読物」1984年6月号。
「日曜日には走らない」は前に書いたような。
「首相暗殺計画」はかなりの異色作。
1938年、近衛首相を暗殺しようとする話。
列車での攻防の描写は見事としかいうしかない。
時代背景も上手く取り入れており読み応え抜群。名短編。
初出は「小説新潮」1981年10月号。
この頃が絶頂期のような気がする。
「寝台特急六分間の殺意」は
十津川警部が妻の直子との電話中に混線で聞いた会話から始まる。
「六分間」というキーワードが何を示しているかがポイント。
まさかこの「六分間」とは思わず意表を突かれる。
このあたりは調べること抜きには書けない話。
初出は「小説現代」1987年8月号。
ひたすら鉄道を舞台にした短編集なのだが
様々なアイデアが散りばめられていて下手な長編より面白い。