西村京太郎271「上越新幹線殺人事件」を読む

1998年初出の作品。
1996年に土曜ワイド劇場で「上越新幹線殺人事件」というのが
映像化されているが、原作は「行楽特急殺人事件」で内容が全く違う。

あらすじ

十津川は休暇を取り上越新幹線に乗って、新潟県下の月岡温泉に向かった。

先輩の元刑事、小久保に会いに行く為だった。
小久保は5年前に起きた爆弾魔の事件で、ただ一人別の犯人説を取り退職していた。

ホンボシとされた人間は自爆して死んだのだが……

その爆弾魔は「トキオ」。
5年後、同様の犯行が起こり始め、十津川は考えたあげく小久保に会いに来たのだ。

しかし、小久保は口を閉ざす。

そうこうしているうちに小久保の再婚した妻が上越新幹線で爆死。
本当は小久保が乗るはずだった新幹線だった。

爆破は妻の座席だけが爆発するよう巧妙に仕組まれたプロの仕業。
小久保が単身上京し復讐に走ることを警戒した十津川は北条刑事に監視を頼む。

爆弾魔トキオがディスカウントショップに脅迫状を送り付けた。

2億払わなければ建物を爆破するというのだ。
警戒にあたった十津川だが建物はいとも簡単に崩壊。
身代金を渋ったばかりに莫大な損害を与えたと非難ごうごう。

その頃、カメラマンを装った北条は
小久保に依頼されあるマンションに集う人物達を撮影。

元自衛隊のメンバー達が十津川に協力を申し出るが
もともと容疑者としてリストアップしていた連中。

プロの眼をくぐり抜け、爆弾魔はどうやって爆弾を仕掛けたのか?

2度目も爆破を許し窮地に陥る十津川。
小久保も命を落とし手掛かりが潰えたかに見えたが……

果たして爆破を防ぐ手立てはあるのか?
必死の捜査の中、十津川達が辿りついた真実は――という話。


感想

スケールの大きなエンタテインメント性豊かな作品。

こういうの映像化すりゃいいのにね。
建物崩れるのだってCG処理すりゃどうにかなるし。

爆弾テロというのは日本でも
1970年代中期に三菱重工爆破事件とかあったけど
驚くのは9・11テロが起こる3年前にこの作品を書いている著者の先見性。

ここ最近続く海外でのテロを見ても
爆弾テロというのはなかなか防ぎようがない。

銃乱射なら個人のイカレた奴の犯行という線が強いが
爆弾となるとそこには組織的なものがだいたいある。

日本も他人ごとではないわいな。

だからといって共謀罪で引っ張られたら、たまったもんじゃないが。

冤罪って簡単に作ることができるからね。


この作品のいいところは
壮大なエンターテインメント性だけではなく
トラベルミステリらしさもきっちりしているところ。

最初の方にしか出てこなかった上越新幹線が
忘れたころに思い切り浮かび上がってくる。

この構成はうまいわな。

この20年に限れば結構代表作だと思う。
テレビドラマじゃもったいないから映画にしてほしい。

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