1974年初出の作品。映像化はまだなし。
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あらすじ
日本ダービーを間近に控えた5月。
12連勝と圧倒的強さを見せる本命馬タマキホープの
オーナーとジョッキーのもとに脅迫状が。
十津川警部が調査に乗り出すがジョッキーは毒殺され、
タマキホープはレースで惨敗、替わりのジョッキーは失踪、
オーナーも殺害されと次々と不可解な事件が起こる。
果たして犯人は誰か?
競馬界内部の不正と仕組まれた罠に十津川警部が挑む。
感想
著者が様々なアルバイトを経験していることは
知られた話だがその中に競馬場でアルバイトの警備員経験がある。
ひらたくいえば両替所(時代ですな)の番人ということ。
中央競馬に八百長はないという神話が生きていた時代だが、
内部の人間の間では八百長話が公然と行われていたらしい。
その後、山岡事件を始め黒い霧が暴かれていくわけだが
関係者が綺麗事ですまそうとしていく様子を
著者がはがゆい気持ちで見ていたことは想像に難くない。
そうした気持ちをぶつけたこの作品は、
著者の初期の社会派作品を思わせる活気に満ちている。
最後のひっくり返し方は賛否両論あるかもしれないが、
そのあたりは推理小説としてある意味常道でもある。
こういう実在のものを扱うと重箱の隅をつつくように
ああだこうだといちゃもんをつけるアホもいるが、
そもそもミステリーってのは現実性がないから面白い。
リアリティとはまた違う。
嘘の中に真実が込められるから作品ってのは楽しいのだ。
読んでいても書いていても。