名作本格ミステリ・夏樹静子「Wの悲劇」を読む

1982年刊行の本格ミステリ。
著者・夏樹静子の代表作の一つとして有名。
1983、1986、2001、2010、2012、2019と
実に6度にわたりテレビドラマ化されている。
映画化は1984年。主演は薬師丸ひろ子だった。毎度おなじみ角川映画。

あらすじ

日本有数の製薬会社である和辻薬品。
その和辻一族が正月、富士山に近い別荘に集まった。

ここで楽しかったね、はいさようならではミステリにならない。
当然のごとく、死人が出る。

殺害されたのは当主・和辻与兵衛。
しかも、殺したのは一族の誰からも愛されている女子大生・摩子。
決して魔子ではない。

一族は摩子を守るために、与兵衛殺害を外部犯行に見せかける。
別荘に訪れていた摩子の家庭教師・春生(はるき)も偽装工作に参加。

ところが何者かが摩子の犯行であることを示唆する罠を仕掛ける――という話。


感想

後の推理小説にも多大な影響を与えた本格ミステリの傑作。
倒叙法にこういうやり方があるとはねえ。
オリジナルとは組み合わせの妙であることをあらためて教えてくれる。

タイトルの「Wの悲劇」とは本格ミステリファンなら誰でもわかるが
エラリー・クイーンの「Xの悲劇」に始まる一連の作品へのオマージュ。

淑枝のキャラなんてのは横溝正史「仮面舞踏会」を思わせるものがある。
「Wの悲劇」とは「Womanの悲劇」でもあるわけで、
そのあたりは映画の薬師丸ひろ子が歌う主題歌にも活かされてますな。

しかし、今まで原作も読んでなかったし
映画とテレビドラマも正直あまりちゃんと観ていない。

最初のテレビドラマ化は1983年に前・後編で放送。TBS系。
キャストは
一条春生……秋吉久美子
和辻摩子……松本伊代
和辻淑枝……有馬稲子
和辻道彦……中村嘉葎雄
和辻与兵衛……安部徹
和辻みね……宮城千賀子
和辻繁……岡田英次
和辻卓夫……矢島健一
間崎鐘平……林隆三
中里右京……あおい輝彦

うーん……与兵衛が刺されるシーンはなんとなく想像がつく(笑)
まあどうだろ、林隆三さんの鐘平は似合うような気はする。
松本伊代を一族全員守りたいと思うかどうかはあなた次第(笑)

1984年角川映画はそもそも原作を映画の中で上映される舞台劇に使用している。
なのでそれ以外の話はまあオリジナルみたいなもんだ。
こういう大胆なやり方もあるんだなあと思う。映画らしいというか。

もっとも劇中劇の他のストーリーは盗作騒動を呼んだ。
まあいちいち指摘してたらきりがないと思うのだが。
昔の音楽まんまパクって金儲けしている奴よりマシじゃねーか。

閑話休題。

なもんで、映画のストーリーは舞台女優を目指す薬師丸ひろ子が
劇団のスキャンダルに巻き込まれて、これはチャンスとばかり成り上がろうとする話。

これはこれでありですわな。
劇中劇とそれを演じる役者がリンクしているところとかね。
三田佳子もこの頃はよかったなあ。高木美保さんは初々しいし。キレイだし。
世良さんは太陽にほえろのボギーが終わったころかな。

ラストシーン、世良さんが去っていく薬師丸ひろ子に拍手しているところはなんとなく覚えてる。

続いて1986年はフジ系列で「Wの悲劇 京都資産家殺人事件」として放送。
原作のどこに京都が関係あんのよという話だが、まあ京都ではひたすら殺人が起こる。

キャストは
和辻みね……高峰三枝子
和辻淑枝……松尾嘉代
和辻摩子……川上麻衣子
和辻道彦……江原真二郎
和辻繁……滝田裕介
和辻与兵衛……高野真二
間崎鐘平……藤木孝
和辻卓夫……安藤一夫
中里右京……山城新伍

家庭教師どっか行っちゃった布陣(笑)
松尾嘉代さんの淑枝は似合いそう。もう松尾嘉代=密会と人妻が頭の中でリンクする(笑)
山城新伍さんの中里ってのも原作に近いような感じがする。
しかし、与兵衛って時代劇の悪役のポジションなのか(笑)

2001年バージョンはテレビ東京系。
キャストは
和辻淑枝……名取裕子
和辻道彦……萩原流行
和辻摩子……大河内奈々子
和辻卓夫……羽場裕一
一条春生……奥貫薫
和辻繁……河原崎建三
間崎鐘平……加勢大周
和辻与兵衛……早坂茂三
和辻みね……草村礼子
中里右京……夏八木勲

この淑枝と道彦夫婦は合う感じがする。中里は…ちょっと暑苦しそう(笑)

2010年は再びTBS。
キャストは
一条春生……菅野美穂
間崎鐘平……香川照之
和辻卓夫……成宮寛貴
和辻摩子……谷村美月
和辻道彦……中村橋之助
和辻みね……池内淳子
和辻与兵衛……津川雅彦
和辻繁……江守徹
中里右京……小日向文世
和辻淑枝……真矢みき

春生ちゃん、主役に返り咲き(笑)
比較的一番原作のイメージに近いキャスティングなのでは。まあまあ。
宮藤官九郎とかオリジナルキャラがどういう役割かは観てないので知らんけど。

2012年はテレ朝で全8回の連ドラ。
キャストは
和辻摩子……武井咲
和辻淑枝……若村麻由美
和辻道彦……中村俊介
和辻卓夫……武田航平
和辻繁……金田明夫
間崎鐘平……高橋一生
和辻みね……野際陽子
和辻与兵衛……寺田農
一条春生……松下由樹
中里右京……津川雅彦

摩子と瓜二つの倉沢さつきというオリジナルキャラ登場。
また春生はショーパブのオーナーで全然設定が異なる。
極めつけはわずか2年で殺される与兵衛から捜査する側に回った津川雅彦(笑)
まるで必殺初期の悪役から橋掛人の柳次になったようなもんである。

そして2019年はNHKでドラマ化。
キャストは
和辻摩子……土屋太鳳
和辻淑枝……中山美穂
一条春生……美村里江
和辻道彦……岡本健一
和辻卓夫……松本岳
和辻みね……夏木マリ
和辻繁……鶴見慎吾
間崎鐘平……吉田栄作
和辻与兵衛……大和田伸也
中里右京……渡辺いっけい

これもなんかイメージ的には悪くない感じが。
どれもちゃんと観たことないからなあ、機会があれば全部観たい。

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