1967年出版の「21世紀の日本」応募作。
総理府が当時募集したもので一等に入選した作品。
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あらすじ
エジプトで進められている砂漠改良プロジェクト。
技師として参加している沢木は、
太陽熱を利用した発電所計画に地球の未来を期待。
ところが、砂漠で事故に遭い九死に一生を得る。
その日から、沢木の悩みが始まった。
自分が考えた未来、合理主義的な考え方は正しいのか。
一方、伝統芸能でありながら観光客向けにしか
人気のない能の世界に父の後を継いで飛び込んだ前島。
前島は21世紀における能の価値を探るように
砂漠での演技を次第に考えるようになる。
そして、沢木の恋人・加代子は
沢木を愛しながらもいつしか前島に惹かれていた。
果たして三人の運命は――という話。
感想
面白いと言えば面白いが評価の難しい作品。
時おり挟まれる文明批判というか、
土地に対する疑問というかそのあたりはさすが。
これを一等にする総理府も懐が深いというか。
今ではなかなか難しい気がする。
日本の伝統とは何なのか、という問いは
今日においても重要というかさらに必要性があるような。
前島がハーフというのも設定の妙。
途中、知り合う黒人とのハーフの歌手が自殺し、
記者が前島に感想を聞きに来る場面がある。
無遠慮な記者に対して前島の代わりに加代子が言う。
「貴方がたには、その女(ひと)のことを
書く資格がないだろうということです」
ここが一番好きかな。
しかし、世の中あんまり進歩してないねえ。