西村京太郎196「特急『あさま』が運ぶ殺意」を読む

1992年出版の短編集。
表題作のほか、「北への列車は殺意を乗せて」「SLに愛された死体」
「北への危険な旅」の計4本を収録。

「特急『あさま』が運ぶ殺意」は
北条刑事が叔母の葬式に向かう際に事件に出くわす。

列車内で女性が毒殺され、連れていた子供を託される。
ここからまるで現代版天一坊事件のような展開に。
背後には当然相続を巡る問題が隠されていた。

ま、それなりの展開。
子供の預け先は亀井刑事しかありませんわな。

「北への列車は殺意を乗せて」は
1994年に土曜ワイド劇場で映像化。
「東北新幹線やまびこ5号の殺意」というタイトルらしい。

単身赴任の男がアパートに仕掛けられた爆弾で死亡。
捜査協力を求められた十津川警部だが決め手がない――という展開。

ラストが結構余韻があるというか。
十津川と亀井の会話だけで余韻を作るって意外と技術がいる。

ドラマのゲストは五十嵐めぐみ、山口美也子、荒木しげるなど。
なかなか渋い。観てみたい。

「SLに愛された死体」はタイトルそのまんまに
幼稚園に展示されるため運ばれてきたSLの中から若い女の死体が。

アリバイ崩しの作品。短編のわりになかなか盛りだくさん。
ラストの亀井刑事のセリフが作品を引き締めている。

こういうところのなんちゅうか、庶民感覚というか
そういうのがあるから売れ続けるんでしょうねえ。
出だしのインパクトといい、結構気に入った話。

「北への危険な旅」はうってかわってイマイチ。
出だしの十津川警部の部下へのセリフが段取り感見え見え。
口紅で書かれた文字もこれまた段取り感抜群。

何書いても上手い著者だが、こういう現場に残された
ダイイングメッセージ的なもんはいつ読んでも上手くない。

さらに十津川の段取り感満載の言葉から
部下が死んでしまうってそりゃないでしょという展開。

ま、たまにはこんなのもあるわね。

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