長編企業小説・清水一行「系列」を読む

1992年出版の作品。
1993年にNHKで連ドラ化され、翌年には続編が制作された。

あらすじ

1987年春――。
自動車用照明機器メーカー・大成照明器のオーナー社長浜岡茂哉は
海外事業部長の長男・祥吾とともに日本を代表する自動車メーカーである
東京自動車の二宮副社長に呼びつけられた。

一方的に社長交代を宣告され、経営権を奪い完全な管理下に置こうというのだ。

いかに系列会社であるとはいえ、大成照明器は独立した企業。
大企業の横車が勝つか、中小企業の誇りと意地が勝つか。
銀行なども巻き込んだ水面下での激しい攻防の末、
茂哉はどうにか会社を守り抜くが更なる計略が待ち受けていた――という話。


感想

企業小説、経済小説という分野はこれまであまり読んでこなかった。
しかし、東京五輪後の社会不安が増し不透明な情報が飛び交う中、
経済情勢・情報の見極めというのはこれまで以上に大切となる。
なので、書く側からいっても内容に盛り込むことは必然となるかなと思い
勉強のために経済小説で大家を成した人たちの作品を振り返るのは重要となる。

小説のモデルとなっているのは日産自動車と市光工業の関係。
今日では両方とも外資の軍門に降っている。
80年代後半は大企業と系列会社の軋轢、
90年代に入り不況になると正社員と派遣の問題、
そして今日では雇用の流動化というより液状化……
そのうち正規雇用と非正規雇用の割合が逆転するかも。
ま、これからは複数の仕事して収入がどうかというのがポイントかもね。
正規雇用だから社会保障が成り立つという時代も終わるだろうし。
後継者不足で廃業やM&Aも進むでしょうし、さてはてどうなるのか。
なんやかやでまだまだ働かされてる方が収入は安定してるのよね。

ま、経済小説をあまり読まなかった理由の一つに
凄い専門用語だらけという先入観があったわけだが
意外と読んでみるとそうでもない。

やっぱり何の題材でも出来事の面白さより人間の面白さを描くこと。
あらためてその大切さを教えてくれた作品。

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