西村京太郎161「山陽・東海道殺人ルート」を読む

1989年出版の作品。
1990年と2008年に土曜ワイド劇場でテレビドラマ化。

あらすじ

東京駅についた寝台特急「さくら」の車内から
男女2人の射殺死体が発見された。
妙なことに2人の所持品からは5000万の札束が。
しかもそれは4年前に起きた少女誘拐殺人事件に絡んだお金と判明。

十津川警部たちは4年前の被害者の父親に疑惑を抱くが
違う寝台特急に乗っていたことがわかりアリバイが成立。
十津川達は誘拐犯人のリーダーと思われる人物に目をつけ
捜査を続行するが――という話。


感想

時刻表トリックが用いられている話なのだが
正直これはいただけない感じがする。
なぜなら推理の段階でそれが検討してないのはどうなのだろうか。
他にも十津川と亀井が訪問したばかりに殺害される
登場人物もいるし、どうも主人公がバカに見えてしまう気がする。

時刻表トリックを前の方に持ってきて
いろいろ面白く工夫はしているのだが。

しかし本書で作者が本当に描きたかったのは
初刊本にある「作者のことば」に示されている。
「日本は法治国家だから勝手に復讐することは許されない。
しかし最近のように、犯罪が凶悪かつ陰湿化して
刑をまぬかれたりするのを見ると、仇討ちが許された時代が懐かしくなる。
幸い小説の世界ではそれが許されるので、せめて活字の上で
爽快さを味わってください」とのこと。

今日ますます輪をかけてそうした状況が進んでいる。

本書の場合、正義は常に犯人の側にある。
世の中、不条理なもんだ。

1990年版のゲストは山本圭、永島瑛子、清水省吾など。
2008年版は升毅、賀来千香子、国広富之、高田純次など。
まさか後に高田純次が亀井刑事になるなんてねえ。
2008年版はアリバイトリックの中身がそもそも異なる。
ま、電車なければそれもしゃーないかも。

なんてんだろ、書きたいことのためには
時として無理を承知で作品創るってこともあるということを
教えてくれる一冊。

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